光への道

朗読詩集【遥かなる地球】より
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昭和四十二年発行
NHK 「詩と音楽」のために書き下ろされた
 

「光への道」

世界の空に向って
羽田国際空港を飛び立つとき
金砂子をまき散らしたような東京の夜景は
眼にしみるように美しい
ダイヤモンドをちりばめたような沖縄列島は
まるで女王さまの首飾りのようだ
今、ロンドンの真上から見下ろす地球の夜も
まるで光の宝玉のように燦然と輝いている

人口二十万以上の街が
八十五も密集している西ヨーロッパは
まるで銀河宇宙の中心のように輝いている
また大西洋を越えて
北アメリカの東部に眼を移すと
同じく四十個以上の小粒のダイヤが
その光を競っている
光は東方よりというが
日本、中国、インド、パキスタンの方にも
明るい灯のかたまりが
黄金のぬいとりのように
海岸線を美しく描き出している

ナイルの流域にも
凍りつく北極海の沿岸にも
一等星、二等星に等しい
光のかたまりの見えるのも頼もしい
また 暗黒の大陸にも
南海の孤島にも
オアシスのように
明るい灯が点々として何かを空に話しかけている

神は太古に
人間に 光と火を与えた
人類の歴史と共に
その火は文明を呼んで
その光の数を増やしていったのだ
神々は
この人間のすぐなる営みを
どんなに深く祝福してきたことだろう

それだのに人間は
今世紀に至って
ふとしたことから
神のみに許された原子の火を見つけたのだ
そして
神の許さぬ火遊びを始めようとしているのだ

さあ もうすぐ午前三時だ
やがてまた 
昨日のような美しい夜明けが地球に訪れてくることだろう
われわれはその暁の光に向って
神がわれわれに与えた光と火の意義について
もう一度よく考えなおしてみよう


南江治郎(二郎)のことのは

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